問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術
はじめに チームは問いかけから作られる
孤軍奮闘の悪循環
- 孤軍奮闘の悪循環にならないために「問いかけ」の質を変える
- 問いかけを変えることで眠っていたチームのポテンシャルを発揮させる
第1章 チームの問題はなぜ起きるのか
1-1 ファクトリー型からワークショップ型へ
- チームの問題の要因は特定の誰かのせいではなく、チームを取り巻く時代環境の大きな「過渡期」によるもの
- ファクトリー型
- 作業を効率的に分担する
- ウオーターフォール型
- ワークショップ型
- 現場と対話しながら「理念」を探求する
- 自ら問題を発見し、自ら解決策を探索する
- ワークショップ型の醍醐味は、仕事の過程のおけるコミュニケーションこそにある
1-2 ファクトリー型のチームが陥る現代病
- これまでの時代はファクトリー型が最も成果をあげる方法だった
- 4つの現代病
- 判断の自動化による、認識の固定化
- 部分的な分業による、関係性の固定化
- 逸脱の抑止による、衝動の枯渇
- 手段への没頭による、目的の形骸化
1-3 ワークショップ型でチームのポテンシャルを発揮する
- こだわりととらわれの循環
- こだわり
- ひとりひとりの衝動を尊重してそれらをチームにとって意味のある目的に昇華させ実現する
- とらわれ
- 凝り固まった認識や関係性に疑いを賭け批判的に問い直しながら新たな可能性を探っていく
- 自分たちが「良さ」の基準を持ち、そこに執着しなければならない
第2章 問いかけのメカニズムとルール
2-1 問いかけのメカニズム
- 問いかけとは、相手に質問を投げかけ、反応を促進すること
- 問いかけを変えると相手の反応が変わる
- 問いかけは相手の感情を刺激する
- 投げかける質問は相手を前向きにも後ろ向きにもする
2-2 意見を引き出す問いかけの基本定石
- 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
- 悪い問いかけは相手の無能さを露呈させ、謝罪を要求する
- 良い問いかけはこだわりを尊重する
- 「こだわりポイントはありますか?」
- 適度に制約をかけ、考えるきっかけをつくる
- 自由度を高くしすぎず、制約をかけることで考えるきっかけを作る
- 遊び心をくすぐり、答えたくなる仕掛けを施す
- 重い空気をならないように遊び心のある問いかけ
- 答えたくなる、答えやすくなる仕掛け
- 凝り固まった発想をほぐし、意外な発見を生み出す
- いつもとは違う言葉遣いで意外な発想を促す
- チームにとって思いもよらない結果を生み出す
2-3 問いかけのサイクルモデル
- 問いかけのサイクル、見立てる、組み立てる、投げかける
- 見立てる
- メンバーの状況をよく観察する
- 組み立てる
- 見立てに従って、望ましい変化を生み出す具体的な質問を組み立てる
- 投げかける
- 組み立てた質問を相手に投げかける
- 問いかけに工夫を凝らし自然と心理的安全性が高いチームを作ることができる(と信じている)
第3章 問いかけの作法① 見立てる
3-1 観察の簡易チェックリスト
- 見立てるとは、対象に新たな解釈のラベルを貼り付けること
- よく観察することで意味付けをすること
- ミーティングの時にひとりひとりの心情を推理してみる
- 観察を支えるガイドラインとしての問い
- 何かにとらわれてないか?
- こだわりはどこにあるか?
- こだわりはずれてないか?
- 何かを我慢してないか?
- チームのこだわりととらわれは使われている言葉に現れる
- 見立ての着眼点
何かを評価する発言
- 観点や価値観
- 評価の食い違いは価値観のズレから
- 確証バイアス(決め付け)
未定義の頻出ワード
- どのような定義で使われているかに着目
- 愛着があるこだわりか、形骸化しつつあるとらわれの可能性が高い
姿勢と相槌
- 「衝動の枯渇」は表情や頷きなどの仕草に出やすい
- 「何か言い残したことはありませんか?」などと直接聞く
3-2 見立ての精度を高める三角形モデル
- 「目標」と「現状」のギャップから変化が生まれる
- 見立ての三角形モデル(必要な変化)
- 場の目的
- 情報共有
- すり合わせ
- アイデア出し
- 意思決定
- フィードバック
- 見たい光景
- メンバーがどのような状態になっていると望ましいか想定しておく
- 場の目的とセットで
- 現在の様子
- 想定した見たい光景から現在の様子を観察する
- ハードルを下げる質問を投げかける
- 場の目的
- 3ヶ月後に見たい光景を想像する
第4章 問いかけの作法② 組み立てる
4-1 質問の組み立て方
- 場の目的や見たい光景をもとにあらかじめ質問を準備しておく(計画的な問いかけ)
- リアルタイムに見立て、適切に質問を組み立て投げかける(即興的な問いかけ)
- チームにおける自分の立場や役職を考慮する
- 元々の自分のキャラクターや芸風に合わせる
- 質問を組み立てる3つの手順
- 未知数を定める
- 方向性を調整する
- 主語の抽象度を高めてチームの視座を引き上げる
- 主語を自分にすることで自分ごと化を促す
- 制約をかける
- トピックを限定する
- 形容詞を加える
- 範囲を指定する
- 答え方を指定する
4-2 質問の精度をあげる「フカボリ」と「ユサブリ」
- こだわりがはっきりせずぼやけているときに解像度を高める(フカボリ)
- 素人質問
- 素朴な疑問を素直にぶつける
- 「AKY」あえて空気読まない
- ルーツ発掘
- こだわりのルーツを探る
- why,whenで掘り下げる
- 真善美
- 根底にある哲学的な価値観を探る
- 素人質問
- 固定観念や価値観のズレなどのとらわれが見えた時に新しい可能性を探る(ユサブリ)
- パラフレイズ
- 別の言葉や表現に言い換え、補足や定義の言語化を促す
- 「その言葉を別の言葉で言い換えるとどうなりますか?」
- たとえる、数値化、動詞化、禁止、定義
- 仮定法
- 架空の設定によってとらわれている制約を外したり見方を変えたりする
- 立場の転換、制限の撤廃、架空の物語
- バイアス破壊
- 特定のとらわれに対し積極的に揺さぶりをかける
- 「制限の撤廃」と「架空の物語」を組み合わせる
- パラフレイズ
4-3 複数の質問を組み合わせる
- フカボリモードとユサブリモードを組み合わせる
- メインの質問から必要なプロセスを逆算する
- メインの質問がビジョンの時は谷型
- チームメンバーひとりのアクションや展望に落とし込みたいときは山型
第5章 問いかけの作法③ 投げかける
5-1 注意を引く技術
- 最初の5分が話し合いを成功させる勝負どころ
- 常に集中していない
- 相手の注意を引くことから始める
- 注意を引くためのアプローチ
- 予告、事前に伝えておく
- あらかじめ意見を求めることを予告しておく
- 共感、相手の心境を代弁する
- 感謝、敬意など共感を丁寧に伝えることで注意を引きやすい状況をつくる
- 煽動、前提を大袈裟に強調する
- 大袈裟な枕詞
- 怒らせる危険もあるので使いすぎは禁物
- 余白、あえて間を演出する
- 「なんだったか覚えてますか?」(3秒沈黙)
- 予告、事前に伝えておく
5-2 レトリックで質問を引き立てる
- 文章に技巧を凝らすこと=レトリックを効かせる
- 光の量を足すタイプ
- 質問の前提や特定箇所の印象を強める
- 倒置法、誇張法、列挙法、対照法
- 光の色を変えるタイプ
- 質問の意味を拡げイメージを膨らませる
- 比喩法、擬人法、共感覚法、声喩法(オノマトペ)
- 光を和らげるタイプ
- 言葉のニュアンスをぼやかす
- 緩叙法(二重否定)、婉曲法(オブラートに包む)
5-3 問いかけのアフターフォロー
- 意見にはポジティブなフィードバック
- 問いかけの技術と姿勢を内省する学習者としての姿勢が重要
- 本音を聞き出すために一歩踏み込む
おわりに
- まずは自分自身の問いかけに工夫を凝らす
- 他のメンバーの問いかけにフィードバックする
- チームメンバーに問いかけの作法を共有する
- チーム全員でミーティングのプログラムを検討する
- チームのオリジナルの質問パターンを発明する
まとめ、感想
感想として、最後まで内容が濃い本だった。まず様子をよく観察して(見立てる)、そこから必要な準備をして(組み立てる)、効果的な質問を投げかけて(投げかける)、話し合いをよくしていきましょうという流れだった。ひとりひとりやチームのこだわりととらわれを質問を通して知ったり理解したりしながら、よい方向へ導いていく、マネジメントの考え方につながるものもあったり、ファシリテーションの準備や技術であったり、コーチングの要素もあるような、汎用的に利用できるテクニックや考え方が詰まっている本で、とても良かった。また実践は実践で難しさはあるだろうけど、きちんと相手を理解して適切に質問ができるようになっていきたいと思った。
読了までにかかった時間: 約205分 = 3時間25分